2011年12月3日土曜日

家族八景 著:筒井康隆


人の心が読める特殊な能力を持った少女、七瀬がお手伝いさんとして
様々な家庭の人間模様に遭遇する人間ドラマ。
その能力を疑問に思いつつも、あらゆる人間の本性を知り尽くした七瀬は
家庭内の問題を解決したり、時には争いをけしかけるのであった・・・。


人の心を読めたらと思ったことが”無い”人はいない。
読めなくても、誰しもが相手の心の中を想像しコミュニケーションをとっているだろう。
しかし、相手の本心は絶対にわからないので、それで悩んで不安になったりするのだ。
本書の主人公七瀬は、そんな悩みを吹き飛ばすテレパス保持者だ。
人の心が読めれば、人生さぞお気楽極楽だろう・・・と思いきやそうは甘くない!
読めたら読めたで人間の醜態がすべてさらけ出されてしまい、誰も信じられなくなってしまうのだ。
最初、心を読んで人を弄ぶような七瀬にこいつ性格悪いなと印象を受けたが
彼女が読んだ人々の思考を考えると、そうなってしまうのは仕方ないなと思える。
とりあえず、男は若い女性と見ると脱がしてしまうし、女は愚痴、嫉妬の嵐だw
心理描写は本作の肝であるので、抽象画家の特殊な心理などどの話もしっかりとディテールを凝って
書かれリアリティがあり、テレパスというフィクションにもリアリティが出ていてさすがだなと思う。
人の心が読めなくて悩んでいる人も、本書を読めば、やっぱり人の心なんて読めなくて良かったなと安心できるに違いない。

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