2010年5月29日土曜日

よくわかる音楽著作権ビジネス1(著:安藤和弘) - リットーミュージック

音楽の著作権について基本的なことをわかりやすく学べる本。
著作ケンゾウ君なる主人公として漫画でテーマをあげて、それの解説を行う形式を取っている。
テーマは全部で30章あり、著作権のことから音楽業界と管理団体の関係などがある。
新人ミュージシャン向けに書かれているようで、あまり難しく考えずに読める内容だ。

ネット上ではJASRACではカスラックと呼ばれ、著作権管理団体は悪の枢軸のように扱われている。
それに対抗するように、ネット発のミュージシャンは権利を主張せずに誰でもタダで二次利用できるように管理団体に登録しない潮流ができている。
そのおかげでユーザーが二次利用によって音楽を広めていくという新たなブームのあり方ができあがりつつある。
しかし、徐々に問題も出てきている。
著作権を主張していない楽曲を使ってライブを行いかなりの収益を上げている人が出てきたのである。
これに対して楽曲の作者について還元すべきでないか?ということである。
これは二次利用を許す以上しかたが無い問題で、巡りに巡って著作権管理団体の必要性にネットユーザーも気付き始めたのかもしれない。

本書はそういった昨今の新たなブームのあり方を考える際にも役立つ一冊であるし、そのブームに乗ろうと思っているミュージシャンも権利について正しい知識を身に付けるのに大変役立つだろう。

2010年5月25日火曜日

ニューロマンサー (著:ウィリアム・ギブスン) - 早川書房

マトリックスや攻殻機動隊などの元ネタになった作品。
それらの作品を知った上で読むとやっぱり物足りないのは仕方ないか・・・。
たくさん出てくるガジェットや、退廃的な世界を堪能するのがメインでストーリーは二の次。
ただし、それを楽しむにも非常に豊かな想像力が必要とされるので敷居が高い。

2010年5月16日日曜日

はやぶさ 不死身の探査機と宇宙研の物語(著:吉田武) - 幻冬舎

祝日が無い6月は連休のある5月の次の月ということと梅雨の時期と相まって、なにも楽しみが無く鬱々とした月ではあるが、2010年の6月は忘れられない月になりそうだ。
そう、6月の13日に小惑星探査機「はやぶさ」が7年以上にわたる苦難のミッションの最後の試練に挑むべく地球に帰ってくるのだ。

本書は2006年に書かれているので、はやぶさが小惑星イトカワへ着陸し帰還を開始するまでとなっている。
それに加えはやぶさのミッションだけでなく日本の宇宙開発の歴史も、小惑星イトカワの名前の元となった糸川英夫を中心に綴られている。
日本の宇宙開発がどれだけ低予算で行われているかや、人との繋がりを大切にした開発の成果は日本の技術力の高さを素人でもわかりやすく確認できる内容となっている。
しかし、この技術力の高さや偉業の意味をちゃんと理解している日本人は少ない。
不況が続く昨今、国家予算を抑えるべく行われている仕分けショーで話題になった

「2番じゃだめなんですか?」

という発言があった。
これはスーパーコンピューター事業の仕分けの際の発言だったと思う。
しかし、本書の中でも指摘されているように科学や工学というのは1番じゃなければ意味がない。
そのことは科学者や工学者に取っては常識なのかもしれない、しかし一般人には上記の発言のような認識なのだ。
本書のような日本の科学の偉業を丁寧に解説する本がたくさんの人に読まれることで、このような誤解がいつの日かなくなればと思う。

さて、最初に触れた祝日の無い6月、13日は”はやぶさの日”としてはやぶさの労をねぎらう国民の休日にしてはどうかと思うがいかがかな?

2010年5月12日水曜日

【書評】ツールへの道(著:今中大介) - 未知谷

元プロロードレーサー、イマナキャ大介選手(向こうではこう発音するらしいw)がサイクリングレース最高峰、
ツール・ド・フランスに挑戦するまでの3年間を綴った一冊。
内容は日ごとの日記形式で書かれており、当時所属していたシマノへのレポートを元にしている模様。
決して読みやすいとはいい難いが、チームメイトとのやり取りや、レース中の心境がリアルに伝わってきた。
ロード初心者としては乗り方や、トレーニングの解説を読みたかったが、そういった内容はほとんど無かった。
しかし、各章に終わりにある、奥さんの手記が意外におもしろく、いいアクセントになっている。
既にロードに乗っている方はもちろん、興味がある方は一読の価値あり。

2010年5月9日日曜日

【書評】エッジ(著:鈴木光司) - 角川書店

当たり前の日常が当たり前と感じるのは何故だろう?
朝、太陽が昇って、鳥がさえずりはじめ、目覚ましがなり、朝のコーヒーを飲み会社に行く。
昼は同僚とランチ、残業をして会社を出るころには既に太陽は沈み月が顔を見せ、空には無数の星が輝いている。
家に着くと鍵を取り出して扉を開け、シャワーを浴びてご飯を食べ、そして眠りに付く。
日常はそんな当たり前のことの繰り返し・・・だが、眠りに付いたあとまた太陽が昇るという確証はあるだろうか?
物語は失踪事件が発端となって日常が崩れ始める。
そして当たり前が当たり前でなくなったと気付いた時には既に世界は崩壊しようとしていた・・・。

世界の七不思議とか、生命の誕生、物理の法則とそれとリンクする数学の定理などをうまくからめて
ある事をきっかけとした世界が終末へと向かう過程をスリリングに書いた一冊。
日本版2012といったところ(ハリウッド映画の2012は観てないけど・・・)。
主人公が知的なスーパーウーマンなのは鈴木節か。

気になったのは、物理の法則や数学の定理などが人間の言語で表されるのがおもわせぶりに
書いているが、一般システム思考入門を読んだあとでは少し滑稽に思えた。
法則や定理なんてものは観測者が”観測できた”ものの羅列というだけであり、それを観測者の言語で表せるのは当たり前だ。
逆に観測者が認識できないことは言語化できず当然であろう(だって認識できないから)。
人間がE=mc2と表して人類最大の発見なんて思っている関係式は観測者のただ思い込みであり、
創造主にとってはまったく意味の無い事象かもしれない・・・。

ま、そんな細かいことはどうでもいい。
ハリウッド版2012を楽しめた人や、終末思想物が好きな人には是非読んで欲しい一冊。
そして日本版2012として映画化希望。
だけど邦画では難しそうなのでアニメでもいいなぁ~、角川さん是非。

2010年5月8日土曜日

【書評】一般システム思考入門(著:ジェラルド・M・ワインバーグ) - 紀伊國屋書店

人の思考には限界がある。何故なら脳は有限だから。
しかし、宇宙は無限に広がっている。
では、宇宙の事をすべて知るのは不可能なのであろうか?
否。
その昔、ニュートンは電卓もコンピューターも無い時代にかなり正確に天体の運動を計算した。
何故それが可能であったか・・・その秘密は単純化にある。

本書では物事を理解するための思考法について書かれている。
一般とは一般的に通用するという意味と、学者や技師だけでなく一般の人という意味も含まれていると著者は述べており、
内容にはジョークも含まれており、硬くならないように配慮されている。。
"生きるということは知ることである"というが、効率よく、そして正確に物事を理解するには思考法が必須であろう。
本書はまさに生きるための一冊といっていいだろう。