2010年4月29日木曜日

【書評】神々のプロムナード(著:鈴木光司) - 講談社




プロムナード (Promenade) とは、フランス語で「散歩」あるいは「散歩の場所」(散歩道・遊歩道)を意味する語。ここから転じて異なる分野で異なる意味で用いられているため詳細はそれぞれの節で記す。



プロムナード - Wikipedia から引用


宗教を扱った作品だが作者があとがきで書いているように、時期的にオウム事件と重なってしまい
思いついたアイデアが書けなかったそうだ。
それもあってか無難な内容になっている。

事件は主人公の親友が失踪後に連絡をよこすところからはじまる。
親友からの連絡をヒントに親友の妻とともに伊豆に向かった主人公達が見つけたものは
空き家になった元宗教団体の施設だった。
時を同じくして親友がファンであった女性タレントも失踪していることがわかる。
彼女はこの宗教団体が主催するタレントオーディション出身者だったのだ。
主人公は二人の関係と宗教団体との関わりなどから失踪の理由を推測していくのだが・・・。

失踪ものなので、もちろんその理由がキーとなってくる。
読み進める上で読み手も独自の理由を考えてみると、真相がわかった時により楽しめるはずだ。

2010年4月26日月曜日

【書評】平成経済20年史(著:紺谷典子) - 幻冬舎

バブル崩壊後の日本経済を著者の主観で追った本。
女性らしく、ノーパンしゃぶしゃぶや保険扶養者の2号だとか変なところに突っ込みが。
そして基本的には自民党の政策批判、特に郵政民営化について多くのページを割いている。
それなのに、政策批判をする上で著者は自信が国民新党の副代表であったことを隠している。
これはフェアではないだろう。
読者はポジショントークだということを前提に読んだほうがいい。
国民新党代表の亀井氏は公共事業を推進するなど当時の自民党の政策と正反対の主張をしているからだ。
ただし、本書にも書いているように緊縮政策を取った自民党が正しいとは私も思えないのではあるが。
また、経済20年史といいつつも客観的なデータを用いた分析というより、著者が聞いた噂など
ソースが明示されない、~らしいなどと読んでいるほうも判断が付かない曖昧な表現が気になった。
なのでとても読みにくく内容があまり頭に入ってこなかった。
体系的に経済20年史を知ることができることを期待したが、それは期待はずれだったが
自民党の政策に反対している方には痛快に読める一冊であろう。

2010年4月25日日曜日

【書評】ロボットとは何か(著;石黒 浩) - 講談社

僕が大好きな映画「アンドリューNDR114」では、主人公のアンドロイドが自我に目覚め
人間になろうと努力し、300年かけて人間として認められる。
そして観客は主人公の目を通し物語を追うことで”人間とは何か”と深く考えさせられるのだ。

本書でも”ロボットとは何か”と題してはいるが、人間のようなロボットを作る研究過程で
まずは”人間とは何か”ということを追求しなければなかったと書かれている。
ロボットを作ることを通して普段意識しない人間らしさというものがわかってくるのだそうだ。
ロボットがロボットとして動いている場合は気にならないが
徐々に人間に似せていくとある時点で人はとても不気味に感じるのだという。
これを”不気味の谷”(人間の近さを横軸、親近感を縦軸に置いたグラフを書くと谷ができる)という。
人間に近ければ近いほど少しでも人間らしさがかけるとかなり気になるというわけだ。
逆にいうとそれはロボットを人間と思いはじめているということでもあるといえる。

では”不気味の谷”を越えたロボットが現れたらそれを人間と見分けるにはどうしたらよいのだろう?
ロボットと人の違いはなんだろう?
人を人と感じるとはどういうことだろう?
本書を読めばその答えが出るかもしれない・・・。

2010年4月22日木曜日

【書評】エール(著者:鈴木光司) - 徳間書店

リングシリーズでお馴染みの鈴木光司による初の本格恋愛小説・・・と帯には書いてある。
順風満帆に生きてきたが結婚に失敗した女性編集者と、落ちこぼれから一流の格闘家になった男の恋のお話。
冒頭、女性編集者の「本気で闘ったことがあるのだろうか」という自分への問いかけからはじまる。
のわりに、物語の中で何かにぶつかるわけでもなく文字通り格闘家が闘う。
特に主人公二人に困難がぶつかるわけでもなく淡々と話が進んでいくのであっさりしている。
女性編集者も問いかけておきながら夫から逃げてばかり、何も変わらないし。
各章が別々に発表されているようで、全体の繋がりもうまくいってない感じがした。

要はクライマックスの闘いの前のあの台詞を書きたかっただけじゃ~ないか?
そしてその闘いの最後には最悪のオチが待っていて、なんとも後味が悪い・・・。
それが鈴木流の恋愛小説といえばらしいのかなとは思う。
ま、読みやすくて一気に読めてしまうので気になった方はどうぞ。

【書評】ループ(著:鈴木 光司) - 角川書店

10年ぶりくらいにリング・らせんに続く完結編ループを読んだ。
発売当時リング・らせんが映画化され、テレビ画面から出てくる貞子に衝撃を受けた人も多いと思う。
リング・らせんはテレビドラマや映画では映像や演出にインパクトを与えるためかホラー作品として作られているが
原作ではどちらかというと、オカルティックな事象を科学的検知から解明しようとしており
一週間で死ぬという"ビデオの呪い"もリングウィルスという科学的な答えを出している。
ただし、貞子の能力や出生については非科学的な部分があった。
そして、前作に残っていた非科学的な部分を科学的な答えを提示したのがループなのだ。
その答えについては賛否両論あるようだが、ホラーではないという指摘が多い。
しかし、このシリーズは最初からホラーではないためとんだ的外れな指摘だ。
呪いや超能力、死者からのメッセージといったオカルティックな事象に
科学的な説明を提示する本シリーズは"SF作品"なのである。

2010年4月21日水曜日

【書評】臆病者のための株入門 (著:橘 玲) - 文春新書

株取引や金融商品の現実が非常に良くわかる良書。
当たり前だが儲け話を他人に話す馬鹿はおらず(なぜなら儲け話で自分が儲ければいいのだから)
儲け話を話す人間は話す相手をカモとしてしか見ていない。
そんな当たり前の話がわかっていない人間が資産運用をしているのが現実である。
そして本書にはさらにこう書いてある"そんなカモがいるからこそ儲けが出るのだ"と。
そういった根本的な話を難しい話を抜きに痛快に教えてくれる本書は資産運用に興味はあるけど
何からはじめればいいかわからない人にオススメである。
参考文献として名著も紹介されているので本格的に取り組みたい人は続いてそれを読むのもいいだろう。